糖尿病は、大きく2つの型に分けられます。一つはインスリン依存型(IDDM)、そして非インスリン依存型(NIDDM)です。
近年急激に増加しているのはNIDDMの方であるのは既に御承知のとおりです。
熱寒としての視点でとらえるとこのNIDDMは熱タイプの疾患と考えて良いと思います。
現在、糖尿病の95%がこの“熱型”のものであると言うことです。
背景としては、元気が有り余っている若い時分、医者の医の字も知らぬくらいバリバリに頑張っていて、40〜50才代と言う中高年世代になり、社会的にも“顔に責任を持つ”と言う時代になった頃、突然痩せてきたり、下の方が言うことをきかなくなったりという異常を感じはじめ、すぐ検査等受けにいけばよいのですが、若い頃からの習慣でついそのままにしてしまい、会社や市町村での検診、あるいは生命保険に入る際の検査等で初めてわかる、というこが多いようです。
いずれ異常を感じたときは、なによりもその状況を客観的に判断することが大切ですので、先延ばしにせず検査を受けるべきでしょう。
毎年8月と言えば電力会社が省エネに御協力をと悲鳴をあげている訳であります。
そうなると、バテたと称して即、焼き肉屋さんへ直行。ビール片手にバクバクバク・・・。
こういうのも“たまに”と言うことであれば何ら問題はないのですが、毎日とはいかなくても一週間に何回も、となると完全に熱オーバー状態になりますので注意が必要です。
当然、糖尿病ですよと医師に宣告された方々はこのような食事のとりかたはしないのが普通ですが、“
病院へいけば糖が出ているのがわかってしまうから ”とか“ 糖尿病と病名を付けられてしまうから ”と言う理由で医師から遠ざかるという方も中にはいるようで、そのまま上記のような無頓着な食事のとりかたを続けてしまうということも往々にしてあるようです。
昨今成人病は、皮肉な事に子供たちにまで忍び寄ってきています。
食生活の欧米化と言うことに付いては、語られて久しい訳ですが、具体的にどうすればという指導が末端まで行き渡っていないように感じているのは私だけでしょうか。
既にご覧になった方もあると思いますが、テレビや雑誌などに“子供が好きな食べ物”に関する調査結果が報告されていました。
それによれば、1位がハンバーグ、2位がカレーライスとなっています。
実生活のなかでの認識はまだまだ低いようで、いまだこのような傾向が続いているようです。
ハンバーグにせよカレーライスにせよ、基本的には熱性の高い食品になりますので、たまにと言うのであればともかくも、このような食事に偏るということは将来的に見ても不安が隠せないのは事実です。
昔に比べ、太った子供が増えたと言われています。うなずける話です。
大相撲にも2軍を作ったらどうかと思う程その数は目立って多くなっています。
では具体的な工夫に付いて考えてみましょう。食材にもよりますが平均的に見てハンバーグが約+440、カレーライスが約+297となります。相撲で言えば熱性メニューの“横綱”、“大関”といったところでしょうか。
現実に子供たちはこのような食物を食べたがっている訳で、食嗜好がそのようになるようにしむけてきた、我々大人が、子供達にその責任を持って行くのは筋違いであると思っています。
言うまでもないことですが、食事を与える側が考えなくてはならない問題であります。
現代の子供達は、“親の年まで生きられない”とか“食卓が危ない”などと言われていますが、なんの工夫もしなければ本当にそうなってしまうでしょう。
基本的原則の繰り返しになりますが、“熱の物”をとったら“寒の物”を食べさせる、あるいは、材料の組み合わせ内容を変更する、と言う一工夫が次の世代への愛情であり健康作りへの第一歩ということになります。
例えば、先程のハンバーグの場合であれば、その後にサラダ(キュウリ・キャベツ・トマト・卵などで作った場合だいたい熱寒指数が−269前後の物になるはずです。)を多めら付けるとか、カレーライスであれば、ビーフ主体の物ばかりではなくじゃがいもなどを主にした野菜カレーにするなど材料の選択やそれぞれの量加減に頭をひねればバランスは自然にとれることになります。
糖尿病の根本治療は食事療法です。
一日に摂取する熱量を必要最低限に定め、また糖質・蛋白質・ミネラル・ビタミンなどが最低必要量を満たしているバランスのとれた食事内容にすることが基本です。
体重1s1日当たり所要カロリー(基礎代謝)の目安を以下に示します。
状態 | 所要カロリー | 体重50Kgの人の場合 |
臥床安静時 | 25〜30Kcal | 1250〜1500Kcal |
軽運動時 | 30〜40Kcal | 1500〜2000Kcal |
中等度運動時 | 40〜50Kcal | 2000〜2500Kcal |
強運動時 | 50〜60Kcal | 2500〜3000Kcal |
食事のカロリー計算は、標準体重1Kg当り
男子30〜35Kcal 女子25〜30Kcalとし、これに年齢や肥満度、運動量を考慮して決めるのが普通です。
この食事をとっても標準体重に向かわないとき、
肥満者では更にカロリーを減少します が、標準体重以下の人は特に不都合がない限り増量などはしません。
正常な代謝を営むために、 糖質は1日100g以上 をとります。
調味用砂糖などは10g前後の使用はよいのですが砂糖入りのお菓子は総カロリーとのバランス上制限するべきです。
蛋白質は組織の新生・ホルモンの生成に不可欠ですので、標準体重1Kg当り1〜1.5gくらいとります。
脂質は必須アミノ酸や脂溶性ビタミンの供給に毎日必要ですが基準量はありません。
ビタミンやミネラルは特に多くとる必要はありませんが、コントロール不良や合併症のあるときは十分とるように心がけます。
これらの条件を満たし、変化のある食事を作るために多くの食品交換表があります。
わが国では日本糖尿病学会編のものが広く利用されているようです。
さて、今回はNIDDMに絞って考えてみましょう。
このタイプの人は、基本的にカロリーをおさえ“寒傾向”の食事内容のものをとるようにすればバランスがとれるようになり良い結果につながるということになります。
熱寒に基づいた食養生は病気にならないように未然に防ぐためのものですので、“病気”の入口にいる程度の人にとってもかなり有効な方法であると思います。
例えば、時折医師の口から聞かれる“境界型”と言う状況のもとにおいては、この熱寒の概念のもとに指導することによりほとんどのものに良い結果を期待出来るのではないかと私は考えています。
今回、既に提示されている糖尿病の食養生メニューに、熱寒指数を当てはめて、計算してみることにしました。結果はなかなか興味深いですよ。
別記の1600Kcalのメニューは、主婦と生活社、家庭の医学などに掲載されていたものから抜粋したものです。
あくまで一例ではありますが、この場合1日の熱寒点数合計は、+519.75
通常、健康人が目安にしている熱寒点数合計がだいたい+600点ですから前述の概念をもってすれば誠に妥当な点数となり、興味深い結果となっています。
<朝食>(+104.5) | <昼食>(+86.1) | <夕食>(+329.15) |
[生揚げと野菜の含め煮]=+54 [甘酢炒め]=+192.5 [もやしの味噌汁]=+118 [ご飯]=0 [スイカ]=−260 |
[スパゲッティサラダ]=+60.1 [じゃがいものチーズのせ]=+79.5 [ミルクゼリー]=−53.5 |
[混ぜ寿司]=−11.6 [茄子とピーマンの鍋しぎ]=+182 [青菜とそうめんの澄し汁]=+158.75 [桃]=+100 |
この文章は薬局新聞に連載された原稿をホームページ用に再編集したものです。
大和久式熱寒食事検査法は日本国において特許を賜りました。
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