【痛風と熱寒食養生】


【痛風はどんな病気か】

人間の体内に、 核酸 という物質があります。これは体内の蛋白と結合したあと核蛋白体となり核染色体の中や細胞質の中で遺伝現象や蛋白合成などを司っています。
何らかの原因で破壊された細胞の核蛋白は肝臓で 尿酸 (prine体)にまで分解され、腎臓から排泄されます。また、一部は胆汁と共に腸管内に排泄され、腸内細菌によって分解されます。
このような尿酸生成と排泄とのバランスが崩れ、血液中の尿酸濃度が異常に増加することにより、痛風発生の下地が形成されていきます。

ちなみに、血清中の生理的尿酸値の上限は、男子で6r/dl、女子で5.5r/dlとされています。尿酸は水に溶けづらい物質で組織内に尿酸ナトリウムという針状結晶となって析出し関節などを刺激して炎症を引き起こします。

統計的には成人、男子、肥満体の人に多いとされています。
一般に、症状が感じられない高尿酸血症期が比較的長く続いた後に急激な痛風発作が起こることが多く、アルコール性飲料の多飲も発症を促します。

かつて王者の病とされ上流階級の罹患が多かったのがこの痛風。20年くらい前までは、ヨーロッパの貴族階級の贅沢病そう考えていた人がほとんどではないかと思います。
しかし20世紀も終ろうとしている現在、"グルメ"、"飽食"という贅沢な食生活に埋もれている民族はないのではないでしょうか。


【尿酸値と大和久式熱寒法】

以前、好意にして戴いている大企業の部長さんたちに協力して戴き、食事の内容をチェックしてみたことがあります。
その結果ほとんどの人が大和久式熱寒法において1000 点以上、しかもその大部分の人が1300〜1500点くらいの点数になってしまいました。
さらには、協力して戴いた方々の約半数が高尿酸血症であるという事実、驚きと共に、悲しいものを感じてしまいました。

皆さん良く御存知のとうり企業戦士と呼ばれる方たちは、仕事の都合上接待など飲酒の機会も多いですし、その際口に入るものもおおよそ家庭料理とはほど遠く、必然的にオーバーヒートタイプ(高得点型)の食生活をせざるをえないということになります。


【基本献立と熱寒点数】

大和久式熱寒法において、健康を維持するために適当な点数とは、どれくらいになるのでしょうか。
人間は熱を持つ生き物ですからプラスマイナスゼロではおかしい訳で、極端な例を除き、健康維持に適する最良の数値が必ずあると思うのです。

そこで、栄養士の先生方が行っている食生活の指導内容にスポットを当て、具体的に比較検討してみましょう。
豊富な理想的献立例に対し、大和久式熱寒法の点数を当てはめていきます。
その結果、平均値は500〜700点(男性600−700点、女性500−600点)におさまるようです。
この数値が人間が健康に生活していく上で必要な点数になると私は考えています。

しかし、ここで注意して戴きたいことがあります。
様々な成人病がはびこる現代。それ相応の食事の制限もある訳です。
大和久式熱寒法は、体質としての熱寒をとらえて活用されるべきものであってこれさえ気をつけていれば内容は問わないという性格の物ではありません。

“○○病に、□□は良くない”というふうにそれぞれの病気には、食べるのを避けた方がよいとされているものがあります。
その点を無視してはいけません。
今回取り上げた痛風の場合、皆様良く御存知のとうり、従来、高蛋白な内容に偏ることは禁忌とされ、レバー、アルコール、海老、蟹、魚卵、もち米、臓物、それに頭から食べる丸干しの類いなどは控えなければいけません。
肉類も以前は控えるべきものだったのですが、現在では野菜と一緒に食べれば良いとされています。

このような内容を吟味した上で、さらに大和久式熱寒法を活用して戴ければ、より効果的で、より適した食養生を実践していくことが可能になると思います。
例えば、痛風の方はおおよそ熱証の方が多いのですが、その場合は基本献立のように食事全体の熱寒点数が平均より低めになるような構成にすることにより、体質まで考慮したメニューが誕生するわけです。

反対に、冷え症の人の場合(痛風の場合はまず有り得ませんが)には、基本献立に比べ熱寒点数合計が、高めになるように工夫すれば良いということになります。
以上のことから、メニューの内容と熱寒点数を考慮していけば、その人により適した食養生メニューが作れるということが、お解り戴けたと思います。


基本献立(熱寒点数合計332.75)

朝食( 40.0) 昼食(152.5) 夕食(128.25)
卵のココット 生揚げのベッコウ煮 鯵のたたき
トースト 人参のワイン煮 根菜の煮物
レタスとコーンの炒めもの ほうれん草の合えもの なます
牛乳 ジャガイモのソテー 里芋の味噌汁
ご飯一膳 ご飯一膳
漬物

食材の熱寒分類

熱性 (+) 平性(0) 寒性 (−)
鶏肉 +1 鶏卵 昆布 −2
玉ねぎ +2 食パン 牛乳 −1
日本酒 +2 チーズ レタス −1
人参 +1 バナナ −1
+0.5 豚肉 きゅうり −1
生姜 +2 ジャガイモ わかめ −1
+2 ゴボウ なす −1
味噌 +1 ご飯 豆腐 −1
キャベツ +0.5 ごま 食塩 −1
かぼちゃ +1 イカ 大根おろし −0.5
牛肉 +1 まぐろ こんにゃく −1

【漢方薬を活用する】

さて、日本で一番痛風になりやすいのはどんな職業の人かお解りですか。
答えは“おすもうさん”です。ゴルフ界で御活躍中の尾崎将司氏。シーズン中トップを走っていたにもかかわらず運悪く痛風の発作が起きてしまい、やむを得ず棄権したことは記憶に新しいところですが、このような業界の方々は、事情もあり食事の量としてはともかくも、内容まで気をつけることはなかなか難しいようです。
エネルギーを資本にして仕事をせざるをえませんから、自ずとこのような傾向になってしまうようです。

では、どうやって熱寒のバランスをとるのか。ある親しい部長さんがいらっしゃいます。
いわゆる“高尿酸血症”の状態にありました。仕事上食事の内容に気を配る余裕はありませんでしたので、私はこの方に漢方薬の服用を勧めました。
服用方法は、朝:大柴胡湯 夜:防風通聖散 という1日2回の服用としてもらい、次の定期検診に臨んでもらうことになりました。
結果、尿酸値は落ちその方はより健康な状態を手にし尿酸値に頭を悩ますこともなく、元気に御活躍中であります。

この方の場合、食生活はほとんど変えることなく尿酸値を下降させることが出来ました。
つまり、漢方薬の使用により600〜700点の熱寒指数を低下させたことになる訳です。
食生活に気を配ることはもちろん大切な事ですが、それが出来ない場合であっても漢方薬を上手に使用することは、食養生の一貫として、かなり有効な手段であるということができると思います。


この文章は薬局新聞に連載された原稿をホームページ用に再編集したものです。

大和久式熱寒食事検査法は日本国において特許を賜りました。


TOPへ戻る