【心臓病と熱寒食養生】


【心臓に毛が生える】

今年7月、向井さんが日本人の女性として初めて宇宙の人となり日本中がわきにわいたことはまだ記憶に新しいことです。
某新聞にこのときの向井さんの食事が載っていました。植物性の蛋白質を中心に、野菜不足を考慮した献立になっています。
熱寒指数で表したものを別表にしましたので参考にしてみてください。

心臓が強いとか弱いとか言いますが、度胸の座った性格は、時に夢の実現のための大きな原動力になります。
それにしても宇宙に飛び出す勇気、訓練に耐える精神力、本当に心臓が強くないと出来ないことですね。

ところで、神経的に強いことを『心臓に毛が生えた』、肉体的な負担が大きいことを『心臓破りの○○』などと表現します。
体力的なことと神経的なことの両方にかかわるものの例えです。
面白いことに、漢方の世界にもこのようなことが表現されています。
中医学の臟腑弁証のところでは次のように表現しています。『心は血脈をつかさどり、神を蔵す』。
様々な原因によって、心の陰陽気血が失調し、血脈の運行失調や精神情緒の異常が見られた場合、動悸・脈の結代・精神異常などは、心の病変につながるということを表しています。

向井さんの宇宙料理『大地より愛をこめて』
高野豆腐 80g(−0.5+0.5)=0
ホウレンソウ(ゆでる)12.5g(−1+0.5)=−6.25
鶏挽き肉(煮る)20g(+1+0.5)=30
人参(煮る)10g(+1+0.5)=15
竹の子(煮る) 10g(−2+0.5)=−15
シイタケ(煮る) 5g(±0+0.5)=2.5
ねぎ(煮る) 7g(+2+0.5)=17.5
鶉の卵(煮る) 3g(±0+0.5)=1.5
砂糖(煮る) 11.5g(−1+0.5)=−5.75
塩(煮る) 0.6g(−1+0.5)=−0.3
酒(煮る) 1.5g(+2+0.5)=3.75
だし汁(煮る) 160g(+0.5)=+80
醤油(煮る) 3.8g(−1+0.5)=−1.9
合計=+121.05

【心臓病について】

肥満 は、心臓病予備軍。バンドが1センチ延びれば、寿命が1年縮むとはよくいわれるところです。
もちろん最近では、単に身長に対しての体重が多いということではなく、 臓器についた脂肪が問題を起こす のだというところに注目した指導も行われています。
このような場合、冠血管にも影響を与え、心臓の血流を減少させる原因にもなってきます。
さて心臓病といいますと、狭心症、心筋梗塞といった虚血性のもの、期外収縮、発作性頻拍症、心房細動・心房粗動、心室細動・心室粗動、WPW症候群、房室ブロック、洞不全症候群、脚ブロック、アダムス・ストークス症候群など不整脈といわれるもの。
心筋炎、心筋症、肺性心、心臓肥大、心膜炎、心内膜炎、心臓弁膜症、心不全、心臓神経症、神経循環無力症などなど・・・。
当然のことながら一言で解決できるような内容ではありません。

中医学的に見ても、心の病証は、心気虚・心陽虚、心血虚・心陰虚、心火上炎、心痺などに分類され、様々な病状を呈します。
お互いの関係を見てみると心気虚・心陽虚は心不全・狭心症・不整脈・全身衰弱・神経症などに見られ、心血虚・心陰虚は全身的栄養障害・神経症・発作性頻脈・不整脈・貧血・甲状腺機能亢進症などに、心痺は狭心症・心筋梗塞に見られるといいます。

しかし、ここで重要な事実があります。様々な病気がある中で、現在我国の死亡原因の第2位をしめるのが、動脈硬化性(虚血性)の心臓病であるということです。
心臓病の対策として、 動脈硬化 を如何に阻止していくかが、非常に重要な事であるというわけです。
当然の事ですが、普段からの食生活、食事療法が必要不可欠になります。

中国では、古くから広い地域に渡って『克山病』といい、子供のころから動脈硬化が始まり、やがて心筋梗塞を起こすという深刻な風土病がありました。
この疾患の発生は、地域的な偏りがあるため、その地域の植物や土壌を調べたところ、 セレンという元素 が欠乏しているということが分かったのだそうです。

幸い、日本の土壌には、このようなことはなく大体この“ セレン ”は含まれているそうです。それにもかかわらず、前述のような状況なのですから、食生活の見直しは早急に着手すべきでしょう。


【生き腐れとは失礼な】

光り物の魚の代表選手といえば“鯖”。ヒスタミンの前駆物質であるヒスチジンを多く含むため、じんましんなどを起こしやすく、とかく嫌われがちな魚です。鯖は、他の魚と違い、体内に強い消化酵素をもっています。
そのため、普通であれば、死後硬直したままなのですが、鯖の場合は硬直の後、グニャッとした感じになり、“鯖の生き腐れ”などと表現されたりします。

しかし、この不名誉な言葉を背負った鯖は、栄養面から見ると非常に優れた点があります。
スーパーなどで、鮮魚のコーナーへいくと、時々それぞれの魚に、EPAやDHAがどれくらい含まれているか、表にして掲げています。
ご覧になった方は、もう御存知だと思いますが、これらの不飽和脂肪酸は、他の青魚に比べ3〜4倍くらい多く含んでいます。
EPA・DHAは、血管の老化を防いだり虚血性の疾患を予防することで有名です。この観点から、光り物の魚も、最近では見直されてきているようです。


【心臓病食養生の基本】

基本的には適正なエネルギー量の中で、動物性の脂肪をとりすぎないようにし、その他の必要な栄養素を十分補給するように心がけるべきです。
心臓そのものを建て直すには、どうしても 蛋白質 が必要です。蛋白質には動物性の物と、植物性の物とがありますが、それぞれ、少々工夫しながらとることをお勧めします。
例えば ですが、当然ことながら脂肪の少ない部分を選ばなければなりません。
牛ならヒレ肉やもも肉、鶏ならささ身、加工したベーコンやハムは、脂肪や塩分も多いので控えた方がよいでしょう。

魚の場合 は、大方心配なく使用していただけると思いますが、大トロやうなぎのたぐいは、脂肪が多いのでさけるべきです。
大豆を代表とする 植物性の蛋白質 は、コレステロールの心配もなく、一日一品はとりたいものです。
こんな感じで内容を吟味した後、熱寒指数を考慮に入れれば、より効果的な食養生になるでしょう。

一例ですが、牛肉は+1ですし、豚肉は±0になりますので、寒タイプの方であれば牛肉を、熱タイプの方であれば豚肉を意識してとるようにするのも一工夫かと思います。
動物性の脂肪は、とりすぎると高コレステロール血症を引き起こす原因になります。

しかし、だからといって全くとらないのではこれまた危険です。動物性の食品の場合、体の組織、すなわち血や肉となるアミノ酸も多く含まれていますので、バランスよく摂取することを心がけるべきでしょう。

コレステロール は、全くなくてもよいのかというと決してそうではないわけで、胆汁酸や副腎皮質ホルモンなどを作る材料でもあり、極めて重要なものでもあります。

ただ、多すぎることによる害が、生命にかかわるものになるだけに、取り分け、目の敵にされる所以でもあります。

に関しても、動物性の物は分が悪いようです。動物性脂肪の場合は、コレステロールを増やす原因にもなる飽和脂肪酸が多く、植物油に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は、血中コレステロールの増加をおさえます。


【マイタケとレンコンのお話】

かつてきのこ狩りで最大の収穫といえば、マイタケ(平)でした。
見つけた人が小躍りして喜んだということからこの名がつけられたそうです。
山沿いに住む人々はマイタケのある場所は友人はもちろん親兄弟にも教えなかったのだそうです。
しかし、このマイタケも現在では人工栽培が可能になり、スーパーの店頭でも100g150円〜200円程度で、手に入れることが出来るようになりました。
最近、高脂血症や高血圧症に効果があるというデータも報告されています。

さて、1000年以上もたった蓮の種子が発芽し、見事に花を咲かせた話は有名ですが、強い生命力と、含まれている蛋白質に耐久力があったのが発芽成功の鍵だったようです。
この頃では、食事が洋風化し、レンコン(寒)の料理を食べる家庭も少なくなったと思います。
しかし、このレンコン、体内の停滞老廃物を排泄させ、血液を浄化し、心臓の動悸・息切れなどにも良いですし、内蔵の働きを正常にする食物ですので、出来ればもう少し見直していただきたいところです。

《心臓病に良い参考メニュー》

(寒タイプ) (熱タイプ) (熱タイプ)
南瓜のいとこ煮 ヒジキとレンコンの炒め煮 ブロッコリーとサラダ
カボチャ 80g(+1+0.5)=120
小豆 10g(±0+0.5)=5
砂糖 4g(−1+0.5)=−2
塩 0.5g(−1+0.5)=−0.25
醤油 3g(−1+0.5)=−1.5
だし汁 100g(+0.5)=50
合計 174.25カボチャ 80g(+1+0.5)=120
小豆 10g(±0+0.5)=5
砂糖 4g(−1+0.5)=−2
塩 0.5g(−1+0.5)=−0.25
醤油 3g(−1+0.5)=−1.5
だし汁 100g(+0.5)=50
合計 174.25
ヒジキ 8g(−1+2)=8
レンコン 40g(−1+2)=40
サラダ油 3g(+1+2)=9
砂糖 4g(−1+2)=4
醤油 6g(−1+2)=6
合計=+67
ブロッコリー 80g(+1)=80
ホールコーン 20g(±0)=±0
人参 30g(+1)=30
ドレッシング 15g(−1)=−15
レモン汁 2g(−2)=−4
合計=+91

この文章は薬局新聞に連載された原稿をホームページ用に再編集したものです。

大和久式熱寒食事検査法は日本国において特許を賜りました。


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